[ 検査結果でわかること 15 ]

頚動脈エコーで動脈硬化が認められた時

日本臨床検査医会 堀川 龍是



2002.06.01


 動脈硬化には色々な種類がありますが、その中で代表的なものが細動脈硬化と粥状硬化です。
 細動脈硬化は脳血管の動脈硬化性変化の指標とされ、本邦の主要な死亡原因の一つである脳血管障害と密接な関係があるといわれています。この細動脈硬化を簡便に検査する方法としては、眼底検査がよく知られています。
 一方、粥状硬化は糖尿病や高脂血症と密接な関係があるといわれており、近年死亡原因として増加傾向にある虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞等)の主要な危険因子とされています。粥状硬化を調べる検査法としては血管造影法がよく使われていますが、大掛かりな設備を必要とすること、検査そのものも検査を受ける人に侵襲的であること等から、もっと簡便で非侵襲的な方法として考えられたのが『頚動脈エコー』と呼ばれている検査です。頚動脈エコーと呼ばれている検査は一つの検査法ではなく、粥状硬化の状態を調べるのに必要な二つの検査法を組み合わせたものを総称して頚動脈エコーと呼んでいます。
 一つは「こだまが返って来るまでの時間を計測することに依って山までの距離を計算出来る」という原理を利用して病変範囲、動脈硬化性病変(プラーク)の性状、石灰化・潰瘍の有無、狭窄の程度等を調べるBモードと呼ばれている方法です。
 もう一つは「汽笛を鳴らしながら近づいてくる汽車の汽笛の音は本来の音よりも高い音として聞こえ、逆に遠のいて行く時は低い音として聞こえ、その音の高低差より汽車の速度が計算できる」という原理を利用して血液の流速を調べるドプラ法です。

この二つを組み合せた頚動脈エコーを利用して動脈硬化の好発部位である頚動脈分岐部の状態を調べることに依って、脳・心臓・大腿動脈等全身の動脈硬化の程度を推測可能ということになります。

 従って頚動脈エコーで動脈硬化所見が見つかった時にはその原因となる高脂血症、糖尿病等の有無、脳血管障害の危険因子の一つである高血圧の有無の検索、関連が指摘されている虚血性脳血管障害・無症候性脳梗塞・閉塞性動脈硬化症等を見つける為に必要なCT、MRI、脳SPECT(脳の血行動態を見る検査)、血小板シンチグラフィー(血栓の局在や程度を見る検査)等を主治医と相談して実施して下さい。勿論右記の疾患が見つかった時は治療が必要ということになります。